『GYAO』で先日ヤン・シュヴァンクマイエルの
『ファウスト』
を見ました。この監督の映画は初めてみた。
コマ撮りアニメーションの鬼才ということしか知らなかったのだが、この作品は俳優が演技する実写映画で、ゲーテのファウストをモチーフにしているようだが、そういう予備知識は全く必要がない。
あまりにも独自の幻想的で不条理で奇妙なユーモアに彩られた映像世界が繰り広げられているので、予備知識などあってもしかたないのだ。ストーリー性がほぼ皆無で監督の頭に浮かんだインスピレーションをそのまま映像化したような悪夢にうなされるような映像の連続で、人によっては多分不快に感じるほど、論理性が無く、美しい映像も無い。皮肉や諧謔があり、物語は無い。
現代人の男が、とある劇場にたどり着き、俳優になり、ファウストを演じ、謎の手が操る人形の悪魔メフィストフェレスに魂を売り、主人公の男も物語の中の謎の論理性で行動するので、その心理が全く共感できない。
しかし、論理を追わずユーモラスな映像に浸ることを選択できたならそこには"不思議の国のアリス"に似た目眩く幻想世界に魅了される時間が待っているのだ。
個人的にはフリオ・コルタサルの短編小説を想起した。